有機農業に取り組んでいる団体やアニマルウェルフェア(健康的な家畜の飼育かな)の普及に努めている団体から、「豚熱」の感染防止策として、農林水産大臣が指定した地域で豚の放牧を中止させる規定が、放牧農家に知らされることなく決められ、また、豚以外の「牛、水牛、鹿、めん羊、山羊」にも「放牧中止」させる規定の制定がなされようとしていると聞きました。
そこで、6月11日までという規定改正についてのパブリックコメントに以下のようにコメントしました。
なぜ、「放牧」を生業とする方々の意見を十分聞いたうえで、施策を決めようとしないのでしょうか。
聞くところによると、屋外で飼育する方法がウイルスに弱いという科学的根拠もない、屋内飼育で感染が防げるという根拠もない、それどころか、日本での豚熱感染のほとんどが屋内飼育の養豚場で発生したというではありませんか。
また、鳥類が運んだかもしれないという推測に基づいて、屋外では鳥と接触して感染するかもしれないから、放牧のほうがウイルスに接触するリスクが高いので禁止するのだということも言われているようですが、鳥類が豚熱やアフリカ豚熱を媒介したという事例もないといいます。
一方、人間が運んだかもしれないし、飼料にウイルスが残存していた事例も証明されるなか、結局のところ、経路は特定されていないというではありませんか。そんななかで、なぜ飼養農家に大きく影響することを、意見を聴くこともなく一方的に、そして拙速に、科学的根拠もなく決めようとするのでしょうか。新型コロナウイルス対策が迷走し、被害を拡大させたことを想起せざるを得ません。
ウイルス感染を防ぐために、私たち人間の世界では3密を避けて、ソーシャルディスタンスを取り、そして「ワクチンを待とう」と言っているときに、豚の防疫対策は真逆の3密状態を作ろうとする施策に大いに疑問を感じます。動物が運動をし、太陽の光を浴び、泥浴びをし、健康を保つ飼育方法のもとで、「免疫力」が高いとも考えられ、そこらの検証はされたのでしょうか。
新型コロナウイルスが投げかけている現代社会の構造の脆弱性からこの防疫対策の問題を考えるとき、ウィンドレスの豚舎に閉じ込め、消毒、殺菌に頼る薄暗い照明の中で行う畜産、そういった、自然から離れ、大地から離れ、太陽から離れる畜産が、ウイルスから畜産業を守ることになるのか、はなはだ疑問です。逆にウイルスの温床となりウイルスを進化させるでありますでしょうし、免疫力の弱い動物たちの健康を保つために抗生物質に頼った薬づけの農業へとさらに傾斜させることになるのではないでしょうか。
こうした観点から、「牛、水牛、鹿、めん羊、山羊」および「豚、いのしし」の大臣指定された場合の舎外飼養中止規定の削除を求めます。
皆さんどう思われますか。
今の食の状況に不安、疑問を抱いておられるみなさんのパブリックコメントへの参加を呼びかけます。
以下を参照してください。
◎農水省に意見を出そう(パブコメ6月11日まで)
特に問題が大きいのは、野生イノシシにも感染が広がり、家畜(豚)にも感染が拡大しつづけている「豚熱」(ぶたねつ)の防疫対策について、「大臣指定地域」に指定された場合に、「放牧場、パドック等における舎外飼養を中止すること」という、「放牧中止」規定が明記されていることです。同様の規定は、「牛」にもあります。この規定の削除を要求しましょう。
※「大臣指定地域」とは、「いのしし等の野生動物が家畜伝染病の病原体に感染したことが確認されているものとして農林水産大臣が指定する地域」のこと。
日本有機農業研究会パブリック・コメント「家畜伝染病予防法施行規則の一部を改正する省令」(6月11日締切)は、次から送付できます。関係資料も入手できます。
パブコメの呼びかけ 6月11日まで 家畜の「放牧中止」について 日本有機農業研究会 (1)
【削除を要求する規定】
(1)「牛、水牛、鹿、めん羊、山羊」の基準(案)Ⅲ-26畜舎外での病原体による汚染防止
「大臣指定地域においては、放牧場、パドック等における舎外飼養を中止すること」
「大臣指定地域においては、放牧場、パドック等における舎外飼養を中止すること」